上司が俺を読んだ。
俺の作った書類を手に持ち、「なんぜここの部分がゴシック体になっていないんだ?」と聞いた。
ここの部分とはどこだと思いながら、上司の質問の意図がつかめず答えられずにいると、続けて上司が質問する。
「見出しはゴシック体、本文は明朝体にするべきだろ? 前に作成した書類はそうなっていたはずだ。ちゃんと前任の先輩のやり方を見習え」
前の書類にゴシック体と明朝体が混在していたのはそういうことだったのか。見出しを本文にコピーするときにいちいち書体を修正するのが面倒ですべて明朝体に統一したけど、上司としてはやってはいけないことだったようだ。
ゴシック体と明朝体は文書を作成している画面上では見分けがつかず、印刷して初めて書体が違っていることに気がつくので極めて作業効率が悪くなる。そんな書体を変える時間があったら俺は1分でも早く帰りたい。あと、俺がやってる仕事の前任ってお前だよな? 自分のやり方が正しいって言いたいだけじゃないのかと疑問に思いつつも、「わかりました」
と返事をする。
「あとなぁ、」
まだ言いたいことがあるのか。
「2020年8月25日って書いてるけどさあ…
2020年8月25日だろ? 日付で、一桁になるところは全角にして、二桁になる箇所は半角にするのが常識なんだよ」
(あんたの中だけじゃないのか?)と心の中で毒づく。
(そう作って欲しいなら最初から明確に指示するべきだろ、ポンコツ野郎!!)と更に心の中で怒鳴る。
この後、見出しをゴシック体に、一桁の数字を全角に修正するも、他の箇所での修正を指示され、1時間の残業をする羽目になった。